かつては男性中心であった社会から、近年、男女の性別に関係なく個人の持っている個性や能力を発揮できる多様性のある社会へと時代は動いています。少子高齢化による労働力人口の減少が進んでいることもあり、女性の活躍推進が不可欠であるとも言われています。男女雇用機会均等法が1986年に施行され、2016年には女性活躍推進法が施行。女性が社会で活躍しやすい環境づくりへの取り組みが進んでいます。その中で、これまでタブー視されていた人には聞けないデリケートな悩み。月経や出産、更年期など女性特有の悩みに対する関心が高まっています。一人ひとり症状が違うため、同性であっても共感が難しい問題。この問題を考えていくのが今話題の「フェムテック」や「フェムケア」です。
「フェムテック」とは「フィーメル(女性)」と「テクノロジー(技術)」を掛け合わせた造語で、女性特有のカラダの悩みや不安にテクノロジーを使って解決していく商品やサービスのことを指します。例えば、月経周期を把握するアプリケーションやセクシャルウェルネスケアなど。もう一つ、「フェムケア」という言葉もあります。「フィーメル(女性)」と「ケア(お手入れ)」を掛け合わせた造語で、女性のカラダをケアする商品のことを指します。例えば、オーガニックコットンの生理用ナプキンやデリケートゾーンの保湿クリームなど。日本では「フェムテック」はムーブメントそのもので、「フェムケア」もその中の一つと捉えています。
2021年のユーキャン新語・流行語大賞に「フェムテック」がノミネートされるなど、国内でも注目が集まっているフェムテック業界。米調査会社 Frost & Sullivan によると、2025年にはフェムテック業界の世界での市場規模が約5兆円規模になると予測しています。日本における働く女性の割合も、年々増加し、2011年から10年の間に326万人の増加となっています。女性が社会に積極的に関わっていくことで、ジェンダー平等の意識の高まりや健康、ライフスタイルを含むヘルス&ウェルネスへの関心が今後ますます高まっていくことでしょう。
女性は生涯に渡って、女性ホルモンの影響を大きく受けています。
年齢によって変わる女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量を表し、
ライフイベントや罹りやすい病気や症状などを下記の図で紹介します。
女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が安定する「性成熟期」。ライフイベントが目まぐるしく変わり、身体や心への負担も多くなる年齢です。生理前のイライラや不安感が起こる月経前症候群(PMS)や貧血など生理に関する悩み。そして、身体と生活に大きな変化となる妊娠・出産もこの年齢で、育児とキャリア形成との両立に悩まれる方も多くいます。近年、不妊治療件数の増加や子宮頸がんの若年化など、悩みも多様化。気になる不調などがあれば、まずは、レディースクリニックの検診などを訪れて、ご自身のカラダと向き合っていきましょう。
閉経前後の約5年ずつを「更年期」と呼び、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少により、ホルモンバランスが乱れ、不調を感じるようになります。つかれやすい、肩こり・腰痛・手足の痛みがある、汗をかきやすい、冷えやすい、すぐイライラするなど症状は人によって様々で、生活に支障が出る場合を「更年期障害」と呼びます。この世代の働く女性は、管理職やリーダーなど責任ある立場についている方も多く、体調不良や能率の低下により仕事を継続できなくなって離職する場合もでてきてしまいます。辛い場合はがまんせず婦人科を受診しましょう。
皮膚に塗布などした成分が皮膚組織に浸透し、体内へ吸収されることを「経皮吸収」と呼び、身体の部位によって吸収率に大きな差が出ます。前腕の内側を1とした時、手のひらが0.83倍、背中が1. 7倍、頭皮が3.5倍、ほほが13倍となり、その中でも突出しているのがデリケートゾーン(性器)で42倍と言われています。
デリケートゾーンは、初経の頃からナプキンやタンポンなどに長年触れ、蒸れたり擦れたりと過酷な環境にいます。口に入れる物に気を使うように、オーガニックコットンのナプキンやショーツなど肌に優しいアイテム選びも大切です。また、更年期になるとおりものや粘液が減少し、デリケートゾーンが乾燥します。腟のバリア機能が弱まり、炎症の慢性化が起きやすくなるため、膣のマッサージやストレッチなどで労わりましょう。お尻をキュッと締めて姿勢を正すだけでも、膣ストレッチにつながります。
人にはなかなか相談できないデリケートゾーンの悩み。一番多いのはニオイで、次に黒ずみ、小陰唇のヒダが大きい(あるいは長い)とつづきます。常にショーツに覆われているデリケートゾーンは、大変特殊な部位と言えます。汗腺や皮脂腺も多く、蒸れて菌の温床となった結果、ニオイを発生。アンダーヘアの毛根もあり、元々色素沈着も起きやすい部位のためゴシゴシ洗いは禁物です。アンダーヘアの処理をはじめ清潔に保つことが大切です。
季刊誌「Iris Vol.52」より抜粋