月経やおりもの、妊娠・出産、閉経とそれに伴う身体の変化。女性の生涯は「腟」の働きに大きく左右されていますが、その構造は目に見えない
もの。肌のアンチエイジングを気にかけるように、人にはちょっと相談しにくいデリケートゾーンの老化現象にも目を向けてみましょう。
女性の身体は、7歳頃から女性ホルモン(卵巣から分泌されるエストロゲンのこと)の分泌が始まり、12歳頃に初潮を迎え、20~30代に卵巣機能が活発になり、30代後半からその機能が衰え始め、45歳頃を迎えると女性ホルモンは急激に減少。50歳頃に迎える閉経後は、女性ホルモンが閉経前の1/10になるとも言われています。(個人差がある)女性ホルモンが減少すると様々な身体の不調とともに、腟にもかゆみやにおい、性交痛などの不快感が現れます。
健やかな腟内は、弱酸性の湿った粘膜により、雑菌の侵入や繁殖を防ぐ自浄作用が働いています。ただ、この作用は女性ホルモンに深く影響されるため、加齢によって粘膜はアルカリ性に傾き、機能を失っていきます。潤いを失った腟は、性交痛を引き起こす傷つきやすい状態で、自浄作用の低下により細菌が侵入し、繁殖して、かゆみやにおいの原因になります。さらに、これが進行して、出血や炎症が起こる症状を「萎縮性腟炎」と呼びます。
健やかな腟の内部を詳しく見てみましょう。腸や皮膚と同じように、腟内にも様々な常在菌が棲み、90%以上が善玉菌の乳酸菌であると言われています。その乳酸菌が糖(グリコーゲン)を分解、乳酸を作り出し、弱酸性(pH値3.8~4.5)を保っています。この腟内フローラのバランスが整っている状態では自浄作用がよく働き、健康的です。しかし、女性ホルモン減少の影響で悪玉菌が優勢になるとそのバランスは崩れてしまいます。
腟内フローラのバランスが悪玉菌優勢になると、アルカリ性環境へ置き換わり、タンパク質などを分解、腐敗させ、有害物質を産生させます。腟が乾く原因のひとつで、自浄作用がどんどん低下し、細菌やウイルスへの抵抗力が弱まってしまいます。
腸内フローラという言葉をよく耳にすると思いますが、腸にも様々な常在菌が棲み、バランスを保っています。不要物を体外に排出する腸の出口と腟口は、とても近い位置にあり、近年、良い相互関係が働いていることが分かってきています。
肌の洗いすぎは逆効果になるように、デリケートゾーンの洗いすぎにも要注意!善玉菌まで洗い流してしまい、腟内フローラのバランスが乱れてしまいます。肌に刺激の少ない弱酸性のボディソープでやさしく洗い、お風呂上がりは、デリケートゾーン専用のクリームで保湿してください。万が一、腟の不快感がつづく際はお近くのレディースクリニックを受診してください。
季刊誌「Iris Vol.53」より抜粋